公共工事の入札に参加したい建設会社にとって、重要な手続きの一つが「経営事項審査(経審)」です。
経営事項審査では、完成工事高だけでなく、財務状況、技術力、社会性などを全国共通の基準で評価し、点数化します。その結果は、国や地方公共団体などが行う入札参加資格審査や格付けの重要な資料として利用されます。
一方で、経営状況分析や申請書の作成、技術職員の確認、完成工事高の整理など、経営事項審査には専門的な手続きが多くあります。
この記事では、経営事項審査とは何か、対象となる公共工事、点数の仕組み、申請の流れ、期限、必要書類、行政書士に申請代行を依頼するメリットまでわかりやすく解説します。
経営事項審査とは?
経営事項審査とは、国や地方公共団体などが発注する一定の公共工事を、発注者から直接請け負おうとする建設業者が受ける審査です。
一般的には「経営事項審査」を略して「経審(けいしん)」と呼ばれています。
経営事項審査では、建設会社について、
- 経営規模
- 経営状況
- 技術力
- 社会性等
を客観的に評価し、最終的に「総合評定値(P点)」を算出します。
国や地方公共団体などの発注機関は、この経営事項審査による客観的な評価に加え、工事実績や工事成績など独自の評価を行い、入札参加資格や格付けを決定することがあります。
そのため、
経営事項審査を受ける=すぐに公共工事の入札へ参加できる
というわけではありません。
経営事項審査を受けた後、発注機関ごとに入札参加資格申請が必要となるのが一般的です。
経営事項審査が必要なのはどんな会社?
経営事項審査が必要になる代表的なケースは、国や地方公共団体などが発注する一定規模以上の公共工事を元請として直接受注したい建設業者です。
原則として対象となるのは、1件の請負代金額が、
- 500万円以上の公共工事
- 建築一式工事の場合は1,500万円以上の公共工事
です。
これらの公共工事を発注者から直接請け負おうとする場合には、経営事項審査を受けている必要があります。
ただし、災害時の応急工事など一部には例外があります。
また、民間工事のみを請け負う建設会社には、通常、経営事項審査を受ける義務はありません。
公共工事に関係する工事であっても、発注者から直接受注するのではなく、元請会社から下請として工事を受注する場合には、経営事項審査の受審義務とは基本的に異なります。
経営事項審査では何を審査される?

経営事項審査では、大きく5つの項目を評価します。
| 評価項目 | 主な内容 |
|---|---|
| X1 | 完成工事高 |
| X2 | 自己資本額・利益額 |
| Y | 経営状況 |
| Z | 技術力 |
| W | その他の審査項目(社会性等) |
これらの評価を一定の割合で組み合わせて算出されるのが「総合評定値(P点)」です。
現在の総合評定値は、次の計算式で算出されます。
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
それぞれの項目を詳しく見てみましょう。
X1:完成工事高
X1では、審査を受ける建設業種ごとの完成工事高が評価されます。
簡単にいえば、
その業種でどれくらい工事を行っている会社なのか
を見る項目です。
たとえば、
- 土木一式工事
- 建築一式工事
- 電気工事
- 管工事
- 舗装工事
など、建設業の種類ごとに評価されます。
公共工事への入札参加を目指している業種について、完成工事高を正しく整理しておくことが重要です。
X2:自己資本額・利益額
X2では主に、
- 自己資本額
- 利払前税引前償却前利益
が評価されます。
単純な売上規模だけではなく、企業としてどれほど経営基盤を持っているかを評価する項目です。
また、一定の条件を満たす「資本性借入金」については、経営事項審査上、自己資本として扱える制度があります。
ただし、すべての資本性借入金が対象になるわけではありません。
対象となるのは、原則として、
- 2025年7月1日以降の申請
- 審査基準日が2025年3月31日以降
- 単独決算による申請
- 国土交通省が定める要件を満たす資本性借入金
などの条件を満たす場合です。
Y:経営状況
Y点では、会社の財務内容が評価されます。
主な評価内容は、
- 負債抵抗力
- 収益性・効率性
- 財務健全性
- 絶対的力量
です。
Y点については、都道府県や地方整備局などが直接計算するのではなく、国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」による経営状況分析を受けます。
経営事項審査を申請する際には、原則として経営状況分析を先に受け、その結果を使用します。
Z:技術力
Z点では主に、
- 技術職員数
- 元請完成工事高
が評価されます。
建設会社では売上だけでなく、どのような資格や経験を持つ技術者が在籍しているかも重要です。
保有資格や要件によって評価が異なるため、
- 1級・2級などの国家資格
- 監理技術者資格
- 登録基幹技能者
- 実務経験
などを確認します。
技術職員として申請できるかどうかや、どの業種で評価できるかを正しく整理することが重要です。
W:その他の審査項目(社会性等)
W点では、経営規模や財務状況だけでは評価できない企業の社会性などを評価します。
2026年7月1日から経営事項審査の評価制度が改正され、W点の内容も変更されています。
主な評価区分は、
- 建設工事の担い手の育成・確保に関する取組
- 建設業の営業継続の状況
- 防災活動への貢献
- 法令遵守の状況
- 建設業経理の状況
- 研究開発の状況
- 建設機械の保有状況
- ISOなどの認証・登録
です。
2026年7月の経営事項審査改正

2026年7月1日以降の申請では、W点を中心に制度が見直されています。
代表的な変更点として、
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の評価項目追加
- CCUS(建設キャリアアップシステム)に関する評価の見直し
- 建設機械の評価対象の見直し
- 社会保険加入状況に関するW点の評価項目の削除
などがあります。
従来は、
- 雇用保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
の加入状況がW点の評価項目となっていましたが、2026年7月改正により、この3項目はW点から削除されました。
ただし、社会保険への加入義務そのものがなくなったわけではありません。
経営事項審査上の点数評価から削除されたという意味である点には注意が必要です。
経営事項審査の点数・ランクとは?
経営事項審査で算出される代表的な点数が「総合評定値(P点)」です。
基本的には、P点が高いほど経営事項審査における客観的な評価が高いことになります。
ただし、
P点だけで公共工事のランクが全国一律に決まるわけではありません。
国や自治体などの発注機関では、P点に加えて、
- 過去の工事実績
- 工事成績
- 地域貢献
- 発注者独自の評価項目
などを加味して格付けすることがあります。
そのため、
「P点が○点なら必ずAランク」
といった全国共通の基準はありません。
公共工事への参加を検討している場合は、経営事項審査だけでなく、参加したい自治体や発注機関の入札参加資格・格付け基準も確認する必要があります。
経営事項審査の申請の流れ

経営事項審査を受けて公共工事への入札参加を目指す場合、一般的には次の流れで進めます。
1.決算を確定する
経営事項審査では、原則として直前の事業年度終了日が「審査基準日」となります。
まずは会社の決算を確定します。
2.決算変更届を提出する
建設業許可業者は、毎事業年度終了後、許可行政庁へ決算内容に関する変更届を提出する必要があります。
原則として提出期限は、
事業年度終了後4か月以内
です。
経営事項審査では、決算変更届に提出する、
- 財務諸表
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
などとの整合性も重要になります。
3.経営状況分析を申請する
登録経営状況分析機関へ財務諸表などを提出し、Y点を算出してもらいます。
分析終了後、「経営状況分析結果通知書」が交付されます。
4.経営規模等評価・総合評定値を申請する
建設業許可を受けている行政庁へ、
- 経営規模等評価申請
- 総合評定値請求
を行います。
ここでは主にX・Z・Wなどについて審査されます。
5.結果通知書を受け取る
審査が完了すると、
経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書
が交付されます。
通知書には、
- X1
- X2
- Y
- Z
- W
- P点
などが記載されています。
6.入札参加資格申請を行う
経営事項審査が終わっただけでは、通常は公共工事の入札に参加できません。
工事を受注したい、
- 国
- 都道府県
- 市区町村
- その他の発注機関
へ入札参加資格申請を行います。
経営事項審査の有効期間は1年7か月
経営事項審査には有効期間があります。
公共工事を請け負うことができるのは、原則として、
審査基準日から1年7か月の間
です。
注意したいのは、
結果通知書を受け取った日から1年7か月ではない
という点です。
たとえば、3月31日決算の会社の場合、3月31日が審査基準日となるのが一般的です。
そこから決算確定、決算変更届、経営状況分析、経営事項審査を行うため、実際に結果通知書を受け取った時点では、有効期間の一部がすでに経過しています。
そのため、公共工事を継続的に受注したい会社では、毎年経営事項審査を受ける必要があると考えておくのが基本です。
申請が遅れると、有効な経営事項審査結果がない期間が発生する可能性があるため注意しましょう。
経営事項審査に必要な書類
必要書類や確認資料は、許可行政庁や申請内容によって異なります。
一般的には、
- 経営規模等評価申請書
- 総合評定値請求書
- 工事種類別完成工事高
- 技術職員名簿
- その他の審査項目に関する書類
- 経営状況分析結果通知書
- 建設業許可関係書類
- 財務諸表
- 工事経歴書
- 工事請負契約書
- 注文書
- 技術者の資格を証明する書類
- 雇用関係を確認する書類
- 建設機械の保有等を確認する書類
- 各種認証や取組を証明する書類
などを準備します。
経営事項審査では、申請書へ数字を記載するだけではなく、
その数字や申告内容を裏付ける資料
が重要になります。
たとえば完成工事高について、工事請負契約書や注文書などによる確認が必要になる場合があります。
必要となる確認資料は申請先によって異なるため、最新の申請手引きを確認しましょう。
経営事項審査は電子申請できる?
経営事項審査は、「建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)」を利用して電子申請できます。
JCIPによる電子申請は2023年1月から開始されています。
利用する場合には原則としてGビズIDを使用し、
- GビズIDプライム
- GビズIDメンバー
でログインできます。
なお、申請先や手続きによって取扱いが異なる場合があるため、実際に電子申請する際には許可行政庁の案内を確認しましょう。
経営事項審査の申請手数料
経営事項審査には申請手数料が必要です。
基本となる手数料は、
経営規模等評価
8,100円+2,300円×審査対象業種数
総合評定値
400円+200円×審査対象業種数
です。
たとえば1業種について両方を申請する場合は、
8,100円+2,300円+400円+200円
となり、合計は、
11,000円
です。
審査する業種が1業種増えるごとに、原則として2,500円が追加されます。
このほか、登録経営状況分析機関へ支払う経営状況分析料金も必要になります。
行政書士へ申請代行を依頼する場合には、別途行政書士報酬が発生します。
経営事項審査は自分で申請できる?
経営事項審査は、建設会社自身で申請することもできます。
行政書士への依頼が法律上必須となっている手続きではありません。
ただし、申請には、
- 完成工事高の整理
- 工事経歴の確認
- 技術職員の確認
- 財務諸表との整合性確認
- 経営状況分析
- W点の加点項目の確認
- 裏付け資料の準備
などが必要です。
特に初めて経営事項審査を受ける場合には、必要資料や申請方法がわかりにくいことがあります。
経営事項審査を行政書士に代行してもらえる?
経営事項審査の申請は、行政書士へ代行を依頼することができます。
行政書士が対応する代表的な建設業関連業務には、
- 建設業許可申請
- 決算変更届
- 経営状況分析申請
- 経営事項審査申請
- 入札参加資格申請
などがあります。
経営事項審査だけでなく、その前後に発生する建設業関連手続きをまとめて相談できる点が特徴です。
行政書士に経営事項審査の代行を依頼するメリット
書類作成の負担を減らせる
経営事項審査では、多くの申請書類や確認資料を準備します。
通常の営業活動や現場管理と並行して、経審の制度を調べながら申請するのは負担になりやすいでしょう。
行政書士に代行を依頼することで、社内の事務作業を減らすことができます。
書類の不備を防ぎやすい
経営事項審査では、
- 工事経歴書
- 完成工事高
- 財務諸表
- 技術職員名簿
などについて整合性が求められます。
記載内容に誤りや不足があれば、補正や追加資料の提出が必要になることがあります。
経営事項審査に詳しい行政書士へ依頼することで、申請書や確認資料の不備を防ぎやすくなります。
経営状況分析から入札参加資格申請まで相談できる
公共工事への入札参加までには、
決算変更届 → 経営状況分析 → 経営事項審査 → 入札参加資格申請
という複数の手続きが発生します。
建設業関連業務に詳しい行政書士であれば、これらを一連の手続きとして相談できる場合があります。
点数を意識した準備を相談できる
経営事項審査では、
- 技術者資格
- 建設業経理
- CCUS
- 建設機械
- 各種認証
- 担い手育成に関する取組
など、会社の取組によって評価が変わる項目があります。
行政書士に相談することで、
次回以降の経営事項審査に向けて、どのような準備が考えられるか
を整理しやすくなります。
ただし、行政書士へ依頼すれば必ず経営事項審査の点数が上がるわけではありません。
経営事項審査は会社の実態や客観的な資料をもとに評価される制度です。
実態のない資格者や取組を申告して点数を上げることはできません。
経営事項審査の行政書士代行を選ぶポイント
行政書士へ経営事項審査の代行を依頼するときは、料金だけでなく対応範囲を確認しましょう。
特に、
- 建設業許可業務を扱っているか
- 経営事項審査の取扱実績があるか
- 経営状況分析まで対応しているか
- 決算変更届まで対応しているか
- 入札参加資格申請まで対応しているか
- 電子申請に対応しているか
- 複数業種の経審に対応しているか
などを確認するとよいでしょう。
「経営事項審査代行○万円」と表示されていても、
- 決算変更届
- 経営状況分析
- 入札参加資格申請
などは別料金となっている場合があります。
依頼前に、どこからどこまでが行政書士報酬に含まれているのかを確認しておくことが重要です。
経営事項審査に関するよくある質問
経営事項審査を受けないと公共工事はできませんか?
国や地方公共団体などが発注する一定規模以上の公共工事を、発注者から直接請け負う場合には、原則として経営事項審査を受ける必要があります。
目安となる金額は、
- 500万円以上
- 建築一式工事は1,500万円以上
です。
一方、民間工事だけを行う場合には、経営事項審査を受ける義務は通常ありません。
経営事項審査と入札参加資格申請は同じですか?
別の手続きです。
経営事項審査は、建設会社の経営規模、財務状況、技術力、社会性などを全国共通の基準で評価する制度です。
入札参加資格申請は、国や自治体などの発注機関へ「この入札に参加する資格を取得したい」と申請する手続きです。
公共工事への入札参加を目指す場合には、両方が必要になるのが一般的です。
経営事項審査は毎年必要ですか?
公共工事を継続的に直接受注する場合には、実務上、毎年受審する必要があります。
経営事項審査の有効期間は審査基準日から1年7か月であるため、次回の経審が遅れると有効期間が途切れる可能性があります。
経営事項審査の結果は公開されますか?
経営事項審査の結果は、一定の情報が公表されています。
そのため、他社の、
- 総合評定値
- 完成工事高
- 各評価項目
などを確認できる場合があります。
競合会社や取引先の経営事項審査結果を確認する目的でも利用されています。
経営事項審査の点数は高いほど有利ですか?
基本的には、P点が高いほど経営事項審査における客観的評価は高くなります。
ただし、入札参加資格の格付けや工事の受注可否がP点だけで決まるわけではありません。
発注機関独自の評価や工事実績なども影響します。
経営事項審査の申請期限はいつですか?
法律上、「決算後○か月以内に経営事項審査そのものを受けなければならない」という一律の申請期限が設定されているわけではありません。
ただし、経営事項審査の有効期間は審査基準日から1年7か月です。
公共工事を継続して受注したい場合には、有効期間が切れる前に新しい結果通知書を取得できるよう、毎年計画的に申請する必要があります。
なお、建設業許可の決算変更届は原則として事業年度終了後4か月以内に提出します。
まとめ
経営事項審査とは、国や地方公共団体などが発注する一定規模以上の公共工事を直接請け負おうとする建設業者について、経営規模、経営状況、技術力、社会性などを客観的に評価する制度です。
経営事項審査では、
- X1:完成工事高
- X2:自己資本額・利益額
- Y:経営状況
- Z:技術力
- W:その他の審査項目(社会性等)
を評価し、最終的に総合評定値(P点)が算出されます。
また、2026年7月1日にはW点を中心とした制度改正も行われています。
公共工事への入札参加を目指す場合には、経営事項審査だけでなく、
決算変更届 → 経営状況分析 → 経営事項審査 → 入札参加資格申請
という一連の手続きが必要になることがあります。
経営事項審査は自社で申請することも可能ですが、多くの書類や裏付け資料を準備する必要があります。
経営事項審査の手続きに時間をかけられない場合や、決算変更届・経営状況分析・入札参加資格申請までまとめて進めたい場合には、建設業関連業務に詳しい行政書士へ申請代行を依頼する方法もあります。

